はじめに
英語を勉強していると、熟語を覚えるべきなのか迷うことがある。
単語帳だけでなく、熟語帳も一冊すべて覚えたほうがいいのだろうか?
結論から言うと、イマージョンラーニングでは、熟語を単語と同じように片っ端から暗記する必要はない。
もちろん、覚えておいたほうがいい熟語もある。
大切なのは、覚えるべきものと、英語に触れるなかで自然に身につければいいものを区別することだ。
1. 熟語を覚える優先度は、単語よりも低い
イマージョンラーニングをするうえで、単語を覚えることが重要だ。
知らない単語が多すぎると、文章を読んでも意味がわからず、音声を聞いても内容を理解できないからだ。

一方、熟語はどうだろうか。
例えば、次のような熟語がある。
- thanks to ~:~のおかげで
- by mistake:間違って
thanks to は、thanks(感謝)という単語になじみがあるので、何かに感謝しているようなイメージから意味を推測できる。
by mistake も、mistake(間違い)に馴染みがあるため、わざわざ前置詞とセットで覚える必要はない。
もちろん、初めて見たときに必ず正確な意味がわかるわけではない。
しかし、文脈や単語の意味から推測できるものまで、わざわざ熟語帳で一つずつ暗記する必要はない。
イマージョンラーニングでは、大量の英語を読んだり聞いたりする。
その過程で自然に理解できる表現なら、無理に暗記するよりも、英語に触れる時間を増やしたほうが効率的な場合もある。
2. 試験勉強とイマージョンラーニングでは、目的が違う
ここで重要なのが、何のために英語を勉強しているのかということだ。
例えば、英語の試験では次のような問題が出ることがある。
- 空欄に適切な前置詞を入れる
- 熟語の意味を選択肢から選ぶ
- 英文を自然な日本語に翻訳する
こうした問題を解くのであれば、熟語の意味や前置詞を正確に覚えておくことには大きな意味がある。
しかし、イマージョンラーニングで目指しているのは、英語を読んだり聞いたりして、英語のまま理解できるようになることだ。
英語を読むたびに、きれいな日本語に翻訳したり、前置詞まで丁寧に覚える必要はない。
もちろん、熟語の知識が不要というわけではない。
重要なのは、試験で正解するための知識と、英語を直接理解するための知識を混同しないことだ。
3. 覚えたほうがいい熟語もある
では、熟語はすべて英語に触れるなかで自然に覚えればいいのだろうか?
そうとも限らない。
例えば、次のような表現がある。
- for good:永久に、これを最後に
- so far:今のところ、これまでのところ
- take after:~に似ている
- put up with:~を我慢する
これらは、単語の意味は一つずつ知っていても、組み合わせたとき、正確に推測するのが難しい。
特に、簡単な単語だけで構成されている熟語には注意が必要だ。
知らない単語が含まれていれば、意味がわからないことに気づきやすい。
しかし、知っている単語だけで構成されていると、なんとなく理解したつもりになって、そのまま読み流してしまうことがある。
その結果、何度も目にしているのに、実際には意味を理解できていないということが起こる。
こうした表現は、熟語帳などを使って、覚えてしまったほうが効率的な場合もある。
イマージョンを続けていれば、いつか自然に理解できるようになるかもしれない。
しかし、そのために何度も遭遇する必要があるなら、最初に意味を確認しておくほうが早い。
つまり、英語に触れるだけで理解できそうなものは無理に暗記せず、意味を推測しにくい重要な熟語は覚えることが大事だ。
4. 熟語を日本語訳で覚えすぎると、かえって理解しにくくなることがある
もう一つ、気をつけたいことがある。
それは、熟語帳に載っている日本語訳を、すべて厳密に暗記しようとしないことだ。
英語と日本語は、一対一で対応しているわけではない。
英語の表現を日本語に翻訳するときには、文脈に合わせて自然な日本語になるように言い換えることがある。
そのため、一つの英熟語に複数の日本語訳がついていることも珍しくない。
しかし、これらの訳をすべて別々の意味として覚えようとすると、英語を理解するために、かえって余計な負担が生じることがある。
例えば、”in time” という表現を考えてみよう。
in time には、「①間に合って」「②やがて」などの意味がある。
①のほうは、なんとなくイメージがつくだろう。
”Just in time”とかなら、ちょうど時間内に間に合ったイメージが湧く。
しかし「②やがて」のほうはどうだろう。
次の英文を見てほしい。
”At first, the new job was stressful, but in time she got used to it.”
「最初は新しい仕事が大変だったが、やがて彼女は慣れていった」という訳だ。
in time =「間に合って、やがて」と覚えようとすると、「この文の場合、どっちの意味だ?」と迷ったり、訳を忘れたりして苦手意識がつくことがある。
一方で、2つの日本語訳を覚えるのではなく、in と time の組み合わせから、”ある一定の時間内”のイメージを持っておけばどうだろうか。
「辛い仕事を続けるうちに、仕事に慣れた。」と、前後の文脈から状況をイメージしやすくなるだろう。
「やがて」という日本語訳を覚えて、英文を理解する必要はない。
日本語訳だけを覚えて使い分けようとするよりも、英語の表現そのものと文脈を結びつけたほうが、スムーズに理解できる場合がある。
5. 英語を英語のまま理解することを目指す
イマージョンラーニングを続けていると、英語を日本語に翻訳しなくても、意味や状況をイメージできるようになってくる。
しかし、熟語を覚えるときに日本語訳を細かく暗記しすぎると、英語を見た瞬間に日本語訳を呼び出したり、無理やり英文を翻訳しようとする癖がつく。
もちろん、日本語訳を知っていること自体が悪いわけではない。意味を確認するために日本語を使うのは自然なことだ。
問題なのは、日本語訳のせいで、英語がより複雑になったりすることだ。
英語を読んでイメージできるものまで、わざわざ日本語に変換する必要はない。
熟語を覚えるときも、できるだけ英語の表現そのものから意味をつかむことを意識したい。
6. 結局、熟語はどうやって覚えればいい?
イマージョンラーニングを中心に英語を学ぶなら、次のような方針がおすすめだ。
① 熟語帳を最初から最後まで暗記しようとしない
試験対策として熟語の網羅的な暗記が必要なら別だが、読む・聞く能力を伸ばすことが目的なら、すべてを暗記する必要はない。
② 意味を推測できるものは、英語に触れるなかで身につける
単語の意味や文脈から理解できる表現なら、無理に日本語訳を暗記しなくてもいい。
③ 何度も見かけるのに意味がわからないものは調べる
特に、簡単な単語の組み合わせで意味を推測しにくい熟語は、意識して覚えてしまう。
④ 日本語訳を丸暗記するより、英語のイメージをつかむ
日本語訳は意味を確認するために使えばいい。複数の訳を一つずつ覚えることより、文脈のなかでどう使われるのかを理解することを優先する。
⑤ 覚えた熟語は、実際の英語のなかで何度も確認する
一度意味を覚えたからといって、それだけで自由に理解できるようになるとは限らない。実際の文章や音声で出会い、その使われ方を確認していく。
まとめ
イマージョンラーニングでは、熟語を覚えることそのものが目的ではない。
英語を読んだり聞いたりしたときに、英語のまま自然に意味を理解できるようになることが目的だ。
そのため、単語帳や熟語帳に載っているものを、すべて日本語訳とセットで暗記する必要はない。
意味を推測できるものは英語に触れるなかで身につけ、推測しにくい重要な熟語は効率よく覚える。
そして、覚えるときも、日本語訳だけに頼るのではなく、英語そのもののイメージや実際の使用場面を意識する。
覚えるべきものは覚える。でも、すべてを暗記しようとしない。
イマージョンラーニングでは、このくらいのバランスがちょうどいいと考える。
