はじめに
今回は過去問や本試験を解くうえで、点を上げるのに効果的だった心構えや解き方を紹介します。

日商簿記1級の問題の特徴
- 記述問題(数値やキーワードを回答する)
- 資料や問題文が敷き詰められていて見にくい
- 意図がわかりにくい指示がある
- 指示や数値があちこちにたくさんある(回答用紙に数値があったり)
- 四捨五入の指示で端数が変わる
- ひとつの数値のズレが他の問題に派生して大きく失点
気を付けていてもケアレスミスしやすいです。
やっとの思いで過去問を解き終えて採点したら、思ったような点が取れなくて嫌になります。
さらに追い打ちをかけるように、解説の講評に
「この問題は比較的解きやすいので高得点を取りましょう」
と書いてあって、何度もイライラしたことがあります。
解く前の心構え
1.傾斜配点を意識
日商簿記1級には傾斜配点という得点調整があります。
受験者の上位10%前後が70点以上の得点になるように、難しい問題は点が少なく配点され、簡単な問題には高く配点されます。
筆者が合格した第167回の試験では、自己採点より5~10点近く点が増えました。
工業簿記で何問か落としたのですが、それでも25点満点中24点でした。
つまり、難しいところまで問題を完ぺきに解くことは非効率であり、みんなができるところを確実に解ききることが大事です。
2.難しいところは即飛ばす
これを知っていることで、精神的な余裕と効率的な時間配分に繋がります。
難問はすぐ飛ばす→時間が余る→精神的余裕ができる→基礎問題が丁寧に解ける→余った時間を使って、難問の中でわかる部分を探す→高得点が取れる
この考え方で筆者は10点近く本試験の点が伸びました。
1回目に受けた本試験(第164回)では、会計学の難問に時間を使いすぎた結果、商業簿記の簡単なところに割く時間がなくなり56点でした。
しかし2回目の本試験(第165回)では、この考えをもとに解いたところ68点になりました。
2回目も落ちてしまいましたが、この戦略が正しいことを実感しました。
3.1級の問題は指示や資料が多いだけで基礎的
ひっかけやダミー資料は存在せず、直近の過去問から焼き直しも多いです。
難問に見えて、実は基礎的な理解と地道な集計で解けるものもあります。
過去問で試験の傾向や自分の弱点を知り、ケアレスミスの対策をすることで、十分合格点レベルに届きます。
4.とにかくケアレスミスしないことが最優先
簡単な問題を急いで解くよりも、確実にとることのほうが大事。
簡単なところこそ検算します。
指示漏れや計算ミスを減らせると、ほかの受験者と差をつけられます。
受験者の大半は、思ったよりも基礎的な部分で点数を落としています。簡単な問題こそ確実にとり切りましょう。
過去問・試験問題の解き方
1本番はマーカーは使えない※2025年現在
筆記用具は、HBまたはBの黒鉛筆、シャープペン、消しゴムに限ります(ラインマーカーや色鉛筆、定規等の使用は認めません)
簿記 試験科目・注意事項 | 商工会議所の検定試験試験科目試験科目試験時間(途中、休憩あり)合格基準商業簿記90分70%以上ただし、1科目ごとの得点は40%以上会計学工業簿記…
日ごろの過去問演習から、シャーペンのみで工夫して解くことが必要です。
- 主語や目的語は四角で囲む
- 見慣れない指示には☆をつける
- 大事な数値には〇で囲む
- わからないものは?をつける等
自分なりのルールでわかりやすくマーキングしましょう。
使った資料や数値にはチェックを入れるなどわかりやすくして、検算の時に抜けがあったらすぐ気づけるようにします。
また商業簿記は、問題が敷き詰められてとても見にくいので、問題ごとに横に線を引いて区切るとわかりやすいです。
決算整理前残高試算表も、B/SとP/Lの勘定の間に線を引いて区切っていました。
余談ですが、本番で配布される計算用紙は商業・工業でA4サイズ各一枚ずつです。
あまり心配する必要はありませんが、日ごろ大きく下書きを書いていると、当日余白が足りないかもしれません。
2 1級は簡単なところを探すゲーム
前から解くよりも、短時間で解ける簡単なものから解くのが大事です。
商業簿記で言えば、一番最後から解いていくのがコツです。
- 法人税等の数値を埋めるだけのもの
- 販売費等の前払、未払いの処理等
簡単に解けるものから回答用紙を埋めます。
その後、社債や減価償却費、退職給付などの独立した問題を解きます。
違和感や嫌悪感を感じた問題や、集計が多いもの、処理や資料が複雑なもの、苦手な論点は一旦飛ばします。
商品や外貨建取引に関連するものは、大体複雑なので飛ばしていました。
初めから計算処理の多い問題に手を付けてしまった場合、以下のようになってしまいます。
検算や資料の精査に時間がかかる→集中力や時間を消費したのに、回答に自信が持てない→精神的に追い込まれてパニック
解き始めて、「おや、これはまずいかも」と気づいたら、そこで手を止めて次の問題に行きましょう。あとで戻ってきたらいいのです。
ある程度回答が進んで時間に余裕ができたら、飛ばした問題の中で簡単な部分がないかを探します。
一見難しくても、わかるところから下書きを書いたり集計していくと、ひらめいて芋ずる式に解けることも多々あります。
3 思い込みに注意
「これは簡単だ」と思った問題ほど注意します。
簡単だと思い込んでしまうと、最後まで問題を読まずに解き始めてしまいます。
結果、指示を見落として自己採点の時に絶望します。
このミスの仕方は、どれだけ実力をつけても慢心するとやってしまうので注意が必要です。
簡単な問題ほど、解いた後に問題文、問題用紙、回答用紙、指示、丁寧に見ます。
4 資料より先に問題文から読む
これはテストでは定番の方法ですが、簿記一級でも大事な解き方です。
会計学や工業簿記、原価計算等の資料が多い問題において、問題文を見る前に資料や指示を眺めていくとまったく頭に入らず時間を浪費します。
例えですが、
あなたが外出をしたとします。
家に帰宅してから、「赤い服を着た人は何人いましたか」と聞かれても、恐らく答えられないと思います。
しかし事前に「赤い服を着た人が何人いるか数えてください」と言われていた場合は、歩きながら意識的に数えているので答えられると思います。
この例と同じように、問題文を先に読むことで
「この問題を解くには、この公式が必要だからあの資料が必要になる」と資料から必要な情報を注意深く、能動的に取りに行くことができます。
その結果、何度も読み直す手間を省き、時間を大幅に節約できます。
5 時間を意識して解く
問題によりますが、目安は商業簿記50分~60分 会計学30~40分
工業簿記・原価計算は解きやすいほうから解きます。
基本商・会より時間は余ることが多いです。
時間内に解ききれないときは、一旦もう片方の科目に手を付けましょう。
時間をかけて解ききっても、その問題の難易度が高かった場合はあまりに点になりません。
しかしもう片方の科目が、時間をかければ高得点が望める問題の場合、傾斜配点で圧倒的に不利になります。
6 損切りが大事! 悩んだら飛ばす、躓いたら飛ばす
3分悩んでしまうと試験終盤に効いてきます。
例えば、試験終了5分前はかなり焦燥感が募り、名前や回答欄のチェックなどの見直ししかできません。
しかし悩む時間を節約して最後に8分残っていれば、あと1問余裕をもって手を付けられます。
簡単に見えて解き始めたけど途中でつまずいたときは、執着せずすぐ飛ばしましょう。
他の簡単な問題も解いて、時間が余ったら戻ってくればいいです。
うまく解けないと、「解けないと落ちるかもしれない」と胸のあたりにグッと、嫌な気持ちが上ってきます。
しかし最も避けるべき事態は、難問に時間を使って点も取れず簡単なところに手を付けられないことです。
7 指示や資料、数値はすべて使う
簿記1級ではダミー資料や使わない指示は、自分の知る限り存在しません。
問題が解けた後こそ注意します。
問題を解いているときは、問題文や下書き、回答用紙などに目線が行ったり来たりして視野が狭くなります。
さらに電卓もたたいて、指示や資料にも目を通し、仕訳を書いて、ケアレスミスに注意しながら解くので、なにかしら抜け漏れが出る確率が高まります。
解き終えたら、視野を広くして、どこか抜けがないかチェックします。
解けた後に、ふっと力を抜いて問題文や回答欄、資料などにサーっと目を通すことで、ミスに気が付きやすくなります。
筆者は原価差異の問題で、”価格差異と数量差異”の回答を逆に書くことが多かったので注意していました。
8下書きに問題文と同じ番号書いておく
計算用紙に下書きを書くとき、問題番号を横に書いておくことで、見直しをするときにパッと対応する下書きを見つけることが出来ます。
地味ですが見直しの時間短縮に効果的です。
9キーワードに注意
未処理、掛売上等の言葉にはチェックを入れていました。
決算整理仕訳に影響するので注意です。
10冒頭の指示は抜粋して前T/Bの上に書いておく
”税率や四捨五入、当期の期日等”の冒頭の指示は、線を引いておくだけでは見落とすこともあります。
前T/Bの上に、大きく書き直しておくことでケアレスミスが減ります。
まとめ
日商簿記一級は、問題自体は基礎的な理解や公式で解けますが、時間配分や注意すべき資料や指示が多く難しい試験です。
ですが自分に合ったケアレスミス対策や解き方の手法が確立できれば、得点が安定し大幅に合格する可能性が高まります。
その作業は地道ですが、日々コツコツ積み上げればできるようになります。


