日商簿記1級を目指し始めた動機から、合格までの過程を紹介します。
目次
日商簿記1級を志したきっかけ それまでの経歴
日商簿記2級を2か月で取得した後、公認会計士受験生として数年間CPAという予備校の通信講座で学習していました。理論科目の勉強は好きで合格点が取れるものの、財務会計の計算が苦手でした。このまま続けても合格には程遠いと思い、基礎固めとして日商簿記1級の受験を開始しました。
また、ここまで数年間も学習したのにも関わらず、業績としては日商簿記2級のみというのが不甲斐ないのもあり、ここまでの努力の証明も兼ねていました。
かなり前に日商簿記1級の過去問を内容を見たときはアレルギーがでましたが、今回は研鑽を積んできたのでギリ耐えることが出来ました。
【前提】スタート時のレベル:過去問で足切り
1級の勉強を始めた頃は、過去問で40点以下が当たり前でした。原価計算6点とか、商業簿記8点とかとってました。
会計士試験はマーク式の問題で、総合問題と言えば連結会計くらいで、他は個別問題を解く形式なので、1級の商業簿記の問題形式に慣れていませんでした。1つ計算を間違えれば連鎖的に失点したり、記述式なので端数の処理で失点したり、そもそも会計士試験と簿記1級で頻出な論点が違かったりと、慣れるまで大変でした。(他にも理論の記述や管理会計、原価計算の問題等も)
ですが会計士試験に比べれば2科目しかないし、1次試験のみだし、主に計算だけやればいいので気楽だと思い、とりあえず頑張って過去問(14回分)を1周しました。
どういう出題の仕方で、自分のケアレスミスの癖はなにかなどを分析しつつ進めていったので、後半の回では50点以上取れるようになりました。一番良い回では66点でした。
さすがに計算の基礎的な理解やアウトプットは会計士試験の勉強で身についていたのが、かなり助けになりました。
1回目の本試験(164回)
そんなこんなで迎えた1回目の本試験は、56点でした。ふつうに落ちましたが、公認会計士試験で落ち慣れていたので特に落ち込むこともなく、ミスの分析をしました。
その結果わかったことは、テキストの例題レベルの知識を間違えていたり、しょうもないケアレスミスが積み重なっているので、そこを対策すれば合格点は十分狙えるということです。
さらに過去問の問題(特に直近3回分)が使いまわされているなと感じたので、次の試験は新しい回のものから解こうと決めました。
本試験後、次の試験に向けて
自分の弱点がわかったので、10月まではテキストの例題を解いて基礎を固めました。これはかなり有効な戦略でした。
1級の対策は大体つかめたので、会計士試験の勉強も並行して行っていました。
そして試験の1か月前に過去問を2回ほど解いたのですが、60点前後の得点でした。まだまだ不安だなと感じ、どうにかならないかと情報収集をしていました。
【転機】プロ簿記で解き方を学んで一気に点数アップ
情報収集の末見つけたのが、「プロ簿記」というサイトでした。
そこに書いてあった中で、一番衝撃だったのが「傾斜配点のワナ」という記事です。
みんなが出来た問題の配点を上げて、みんなが出来なかった問題の配点を下げる

会計士試験の短答式でも「受験生の40~50%が正答できる問題を解けるようにするのが大事」と言われていましたが、傾斜配点というものは存在しませんでした。なので目からうろこでしたね。
そしてどの記事か忘れましたが、
できるところがないかを探す宝探しであり、わからないものはすぐ飛ばすことが合格の秘訣
的な内容が書かれており、その意識で過去問を解いたところ、今までにない解きやすさを感じました。
問題のすべてではなく、自分ができるところだけに焦点を絞った結果、大量の資料がより簡単にシンプルに見えるようになりました。そして時間に余裕ができ、見直しやケアレスミス対策に注力できました。
2回目の本試験(165回)
上記のコツを引っ提げて、割と自信がありました。自己採点では68から73点程度でした。
結果は68点。合格点には届きませんでしたが、「これは次いけるな」という実感が湧いてむしろポジティブな感情でした。会計士試験は難しすぎて常にゴールが見えませんでしたが、1級は2回目の受験で合格まであと少しのところまで来たことに喜びを感じたからです。
また、会計士試験のほうでも計算の得点が大幅にアップし、簿記1級の勉強が会計士の対策にも直結していてなおさらモチベーションアップにつながりました。
12月から5月末まで
この期間は完全に会計士試験の勉強に時間を充てました。1級の勉強はもうあまりしなくても大丈夫と判断したからです。
会計士試験は不合格。でも学びは無駄じゃなかった
会計士試験に落ちた原因は、計算対策に時間を割かなくなっていたからです。
12月の試験で計算力が上がったが、理論の点数が下がっていたためそちらの対策に力を入れた結果、肝心の財務の計算力がまた落ちていました。
この時点で会計士試験は撤退しました。今の自分が最大限できる量を圧倒的に上回る勉強量と質を求められている試験だと実感し、後ろ髪を引かれることもなく辞めました。
ですが悪い事だけではなく、管理の計算問題集の中で、重要性が高い部分を解いていたことがこのあとの1級の試験に活きました。
会計士試験後の10日間で追い込み
試験後、CPAラーニングやYouTubeを活用して、論点ごとの山当てを参考にしながら過去問対策を実施しました。
解いた過去問をGood Noteというアプリでまとめて、効率的に復習を行いました。
時間はありませんでしたが、そこまで不安はありませんでした。「できることをやる」という心持ちで焦らず対策しました。
3回目の本試験(167回)
会場は家から近めの大学で、天気も良くかなり運がいいなと思いました。
試験会場につくと20~30人ほどが入る教室で、一番後ろの席でした。これもまた運がいいなと感じました。
しかし試験が始まる直前に、様子のおかしなおじさんがエアコンの風が当たって寒いと2回ほどぶっきらぼうにクレームを入れて空気がピりつきました。(笑)
商業簿記と会計学はいつもの手ごたえでしたが、対策が手薄だった1株当たりの純利益や純資産の問題がでて動揺しました。会計士試験でもあまり頻出ではありませんが難易度が低い問題ですので、「復習してれば確実にとれたのに」と悔しい思いをしましたが、解けるところだけ解いてさっさと飛ばしました。
管理会計の問題では、大量の資料とともに過去問で見ない形式の問題が出ました。「うわー最悪。でもこれみんなも同じ気持ちだろうな」と思い一瞬で飛ばして、一旦原価計算を解きました。原価計算も第一問のほうが計算が合わなかったりと嫌な印象でしたが、第二問のほうがCVP分析で、めちゃくちゃ会計士試験でやり込んでいたところでサッと完答できたので安心しました。
その後管理会計の問題に戻ってプロ簿記で学んだ通り、「できるところはないか」を探して、何が問われているか、簡単に出せるものはないかを見ながら資料の整理をしていきました。ここで会計士試験の対策で管理の問題集をやっていたことが功を奏し、複雑そうな資料に惑わされずにシンプルに根本の考え方が見えてきました。
結果そこそこ回答を埋めて試験が終了しました。
帰りの電車や家でXでサーチしていたところ、自己採点で70点を超えている人がほとんどいませんでした。「今回は難しいんだな」と印象を受け、自己採点をしたところ59点程度でした。
割と手ごたえを感じていましたが、実力及ばず悔しさで試験後からすぐ次に向けて対策を始めました。もう会計士試験は撤退したので、1級対策に全力を注いで、「11月は絶対受かる、受からなきゃ諦める」というモチベで、7月末まで毎日ゴリゴリ過去問を解いていました。
そして合格発表のことなど完全に頭から消えていましたが、急に当日思い出して「どうせ落ちてるけど何点か確認するか」と検索したところ…
試験結果 おめでとうございます。合格です。
( ^ω^)・・・ん?
時が止まりました。とりあえずスクショ取りました。
「間違えじゃ?」と思ってまたログインし直してみました。
⁉
夢かと思いました。
完全に諦めていたところで、まさかの合格通知。
友達や家族にも「なんか合格してた」と連絡し、お祝いの言葉をもらい、じわじわ達成感を感じました。
傾斜配点で、自己採点よりも点数が大きく伸びていたのが決め手だったようです。
自己採点(予備校4つの配点参考): 商業簿記10~11点 会計学11~14点 工業簿記16~21点 原価計算15~19点 計52~65
合格結果:商業簿記13点 会計学14点 工業簿記24点 原価計算19点 計70
過去問を解いて積み上げたこと、プロ簿記で学んだこと、会計士試験で培ったこと等、これまで培ったことがすべて活きた形の合格となりました。
【まとめ】簿記1級に挑戦して本当に良かった
会計士試験に沼って、メンタルがやられたあの時、「一旦簿記1級を受けてみよう」と挑戦して本当に良かったと心から感じています。合格から約1年ほど経ちますが、頻繁に感じます。この記事を書きながらも振り返りながらも感じています。
自分のここまでの積み上げの証明になりましたし、自分に対して1つの壁を越えたという自信が持てます。ギリギリのボーダー合格で簿記の知識自体まだまだ不完全で、自信をもって「簿記ができます!」とは言えませんが。
【今】簿財(税理士試験)を勉強中。簿記1級合格が大きな支えに
今は税理士試験の「簿記論」「財務諸表論」を勉強中ですが、
初見の問題形式でまだまだ点が取れなくて、不安に襲われるときも「一級も最初はそうだった」と思うことで冷静でいられます。1級の合格証書が自分を支えてくれています。
だけど「簿記論・財務諸表論は日商簿記1級と同等の難易度」とか「日商簿記1級のほうがトータル難しい」とかネットで見ますけど、簿・財むずいです。答練とか他の受講生レベル高いです。余裕ないです。精進します。