目次
はじめに
英語を効率的に習得するための方法は数多くありますが、その中でも最近特に注目され、効果があるとされている方法のひとつが「イマージョンラーニングです。
この学習方法は、日本にいながらも、映画や音楽、Youtubeなどを通じて英語にどっぷりと浸かることで、自然と英語を習得していく、非常に実践的で効果的な学習方法です。
しかし、この学習方法は効果を実感できるまで時間がかかる勉強法であり、不安になることが多々あると思います。
本当にこのまま続けてできるようになるのか?
時間が無駄になるのではないか?
そんな方にお勧めの記事です。
本記事では、イマージョンラーニングをするうえで遭遇する疑問や不安に対して解説し、効果的な学習を実現するためのアドバイスを提供します。
イマージョンラーニングにおける代表的な不安と解決策
①「全然理解できないままで良いのか?」
悩み:映画やドラマの内容がほとんど分からず、ただ見ているだけで意味があるのか疑問に感じる。
回答:あまりにも理解できないとストレスを感じ、眠くなってしまいます。
このような状態で学習を続けても、記憶力や集中力の低下により学習効率がよくありません。
これの対策として、「コンプリヘンシブル・インプット(comprehensible input)」というものがあります。
これは学習者が理解できる範囲のインプットをするという意味で、具体的には「少しだけ難しいけど、だいたい理解できる内容の英語を聞く・読む」ということです。
アメリカの言語学者 スティーブン・クラッシェン(Stephen Krashen) が唱えた説で、イマージョンラーニングをするうえでとても大事な考え方です。
具体的な行動としては、
- 90%以上理解ができる英語の動画を見る(体感70%以上でもいいと思います)
- ある文のうち1単語だけわからない場合、その単語を調べる(大半がわからない文はスルーする)
などが挙げられます。
これがなぜ大事かというと、
- 完全にわからないインプット →難しすぎて脳が処理できずに集中できずに眠くなる
- 逆に100%わかるインプット →新しい学びがないので成長しない
- 少しだけ難しい→ 新しい語彙や文法を自然に吸収できる
つまり、理解できる+ちょっと挑戦的な内容が、最も効率よく英語力を伸ばします。
90%以上の動画を探すコツは、対象年齢7歳以上の作品を探すことです。簡単な単語ばかりでセリフが形成されているため、単語で躓くことは少ないです。
具体的にお勧めの作品は、ネットフリックスではポケモンコンシェルジュという作品です。
1話15分程度でちょうどいい長さですし、映像も綺麗でかわいいです。
90%も理解できる動画がない!という方は、
- 日本語で見たことのある作品等、なじみのある作品を見る
- 日本語音声・英語字幕で見る
というやり方もおすすめです。
筆者も英語学習を始めた初めの半年は、日本語音声・英語字幕でアニメを見ていました。
その後に、「同じ作品を英語音声・英語字幕で見たら内容わかるんじゃないか?」と思いました。実際に、かなり理解をすることができてイマージョンラーニングの効果を実感することができました。
②「覚えた気がしない」「語彙が増えている実感がない」
悩み:単語帳のように明確な成果が見えにくく、学習している感覚が薄い。
回答:単語帳はテスト対策に有効な単語数に絞られているので、回転しやすく、成果も感じられやすいと思います。
反対にイマージョンラーニングは、様々な分野の動画等を見るため、この点では単語数が絞られずに効率が悪く感じます。
しかし、イマージョンラーニングには以下のようなメリットがあります。
①感情的な結びつき:感情に関連した情報は記憶に残りやすい
映画やドラマを通じて英語を学んでいると、ストーリーやキャラクターに感情移入することが多く、その過程で学んだ英語の表現も記憶に定着します。
また記憶をつかさどる海馬は、リラックスしている時や楽しんでいる時に活発になるため、娯楽として映画や動画から学ぶことで、より楽に記憶に刻まれます。
②文脈や映像で学べる
シチュエーションや映像付きで、セリフからフレーズを学ぶことで、実際にどのようなときに使われる単語なのかを自然と記憶することが出来ます。
そうすれば、いざ自分が英語を話すときに無意識にフレーズが湧いてくるようになります。
③圧倒的な時間、量を稼げる
単語帳で暗記することは機械的で、せいぜい数十分程度で飽きてしまいます。
しかし、イマージョンラーニングによって楽しみながら学習すると、一日何時間も英語に触れることが出来ます。しかも暗記しようという意識もないまま、記憶に刻まれます。
結果的に試験などが控えていなくても、娯楽として日々英語を取り入れることが出来るため、トータルで量を稼ぐことが出来ます。
量が稼げると、反復する回数が自然と増えるため、記憶の定着率が上がります。
記憶の定着には反復学習が欠かせません。CMで企業名やメロディーを覚える気がなくても、自然に覚えてしまうことがよくありますよね。
これと同じように、英語の単語やフレーズも何度も耳にすることで、気づかぬうちに記憶に刻まれていきます。
思い出せないだけで、脳には刻まれている
また、一見覚えられていないように感じても、実は脳には刻まれています。
「数年前に観た映画や聴いた音楽のフレーズやタイトルを思い出してみて」と言われても、大部分はすぐには答えれられないです。
しかし久々に見たり聴いたりした時に、メロディやセリフなど意外と覚えているという経験をしたことがある人も多いでしょう。
筆者もネットフリックスを見漁るうちに、懐かしい作品をたくさん見ました。
最近まで10年前に見た以来タイトルすらも忘れていたのに、久々に見ると、ストーリー展開やセリフや音楽を覚えていたりしました。
これは、情報が一度脳に記録されると、しばらく忘れていても再度接触することで記憶が呼び起こされるためです。
イマージョンラーニングも同様で、何度も繰り返し触れていくことで、英語のフレーズや単語が無意識に記憶に刻まれていくのです。
最近見た映画の単語やフレーズが思い出せなかったり、効果の実感が薄く感じても、しっかり脳には刻まれています。
イマージョンラーニングによって語彙を獲得する過程
初めは意味が分からなかった単語やフレーズが、次第に「よく耳にするな」と感じるようになり、そのうち理解できるタイミングがきます。
このような流れで語彙力を獲得します。
なじみのないフレーズや単語を見る→意味を推測する、調べる→何度も見かけるようになる→”どういう場面で、どんな人が、どんな感情で使うか”が理解できる→獲得
イマージョンラーニングをしていると、これらの工程を意識しなくても自然と繰り返します。
初めはわからない単語やフレーズだらけで、中々スムーズに映像を見る事が出来ずに、ストレスを感じると思いますが、数か月も続けると、だんだんなじみのあるフレーズばかりになります。
また、学習を続けるうちに知らない単語がでてきても、気にしなくなります。
そのうち自分のものになるタイミングがくるとわかっているからです。
他にも英語のスラングや口語表現、文化的な背景やユーモアについても、理解できないと感じることがあります。
しかし、上記と全く同じ過程を辿るため、イマージョンラーニングによってインプットすればするほど理解度が増します。
③「このまま続けても話せるようになるのか?」
インプット中心の学習なので、アウトプット(会話力)に結びつくか不安。
「言語は話してなんぼ!」
「話す練習をしないと、いつまでも話せるようにならない!」
という意見があります。
確かに、これは一理あると思いますし、インプットだけしていてもスピーキングの練習をしていなければ、流ちょうに話せないと思います。
ですが、逆に話す練習から始めるのも効果的ではありません。
インプットが足りていない状態で英会話の練習をする弊害
インプットが足りていない状態で、無理やり英語で話そうとすると、
日本語で話したいことを考える→正しい文法をあてはめながら、英語に無理やり翻訳→不自然な英語になる
そのうえ、ネイティブがよく使う表現が頭に入っていないため、リスニングすることもできません。
しかし、イマージョンラーニングによって大量にインプットしてからスピーキングの練習をすると、インプットされた英語の中から、状況に合ったセンテンスを瞬時に思い出して、そのまま話すことができます。
大量にインプットすることで、なじみのない英語を翻訳したり、話したいことを文法的に考える工程が減るため、英会話にとても効果的です。
英語の大量インプット→話す練習
この順番で英語学習することが効果的です。
海外にいながら、日本語をイマージョンラーニングによって学んだ方の動画
日本語がペラペラなこの方もやはり、大量にインプットしてから話す練習を推奨しています。YouTubeでは、日本語を学習している海外の方がたくさんいます。
日本語をペラペラに話せる外国人の大半が、漫画やアニメで日本語に興味を持ち、その後この工程で学習しています。
➃「時間が無駄になっていないか?」
悩み:効果がすぐに出ないため焦りを感じる
回答:語学の学習には大量の時間が必要です。
数か月で話せる、聞けるようになることは、再現性が低い事だと思います。
「数か月や1年で英語がペラペラになる方法」なんてうたい文句は、英語ビジネスへの誘導です。短期で楽に成果を出したいという欲は、こういったビジネスのカモにされてしまいます。
どれくらいのレベルを目指すかによりますが、外国語を不自由なく聞けて話せるというレベルになっている方は、3年、5年、10年以上などのスパン学習に費やしているケースが多いです。
「皆それくらいかかるものなのだ」と理想や期待値を下げて、長期目線で気楽に学習することで焦りが和らぎます。
日本語も、数十年の長い時間使い続けて今のレベルになっていますよね。
海外の日本語学習者の方からしたら、何千もの漢字の読み書き、読めることや同音異義語、擬音語、てにをは等、日本語はめちゃくちゃ難易度が高いのです。
しかし、日本人は当たり前に使い分けることが出来ます。時間をかけて自然に学べば、高度なこともできる能力が既に備わっているのです。
➄「同じ作品を何度も観る意味があるのか?」
悩み:繰り返し視聴が推奨されるが、飽きてしまう
回答:飽きると脳の働きが低下して、学習効率が悪くなります。
飽きたら次の新しい作品を見ましょう。間を空けて忘れたころに戻ってくると効果的です。
他の動画などから吸収して、久々に戻ってくると、前よりもリスニング力、理解力、語彙力の向上を実感出来て、モチベーションが加速します。
このことについて以下の記事で、20ヶ国語を学習している、スティーブ・カウフマンの動画を例に詳しく紹介しています。
➅「ネイティブのスピードについていけない」
悩み:何度聞いても早口すぎて聞き取れず、モチベーションが下がる。
回答:イマージョンラーニングを始めたての頃は、慣れないフレーズや語彙で思考が停止して、ついていけなくなることは多々あります。
これの対策としては、
- ①英語が早口に聞こえる理由を知る
- ②長い文がきたら、一時停止して文を精読する
- ③イマージョンラーニングを継続し、馴染のある表現を獲得する
が効果的です。
①早口に聞こえる理由については、こちらの記事で詳しく解説しています。
②一時停止して精読することで、ただ早口についていけていないのか、英文自体のレベルがたかくて理解できないのかの区別がつきます。
早口についていけないと、自信を失ってしまい、「ネイティブレベルはなんてハードルが高いんだ」と感じてしまいます。
しかし、一時停止してよく見てみると、そこまで難しい単語や言い回しを使っていないケースが多々あります。
さらに一度丁寧に理解した文は、2度目は早口でも理解できます。
③イマージョンラーニングを継続していると、頻繁に同じ表現や語彙に出会います。
脳に馴染んだ表現は「またこのフレーズね」と処理が早くなります。
話し手の発音が適当で、聞き取れないような場面でも、推測で補えるようになります。
他にも話す前から、「このフレーズを言うだろうな」と先読みできるようになります。
⑦「自分にはレベルが高すぎるのでは?」
悩み:初心者がいきなり英語の映画やドラマに挑戦して、自分にはまだ早いのではと感じる。
回答:あまり効果が感じられない時に、このような思考になってしまいます。
とにかくハードルを下げてみてください。上記で述べた通り、
- 日本語音声・英語字幕で慣れる
- 一度見たことのあるものを見直す
- 1日5分でもいい
- 1日1単語新しい語彙獲得できたらいい
など、ハードルを下げてみることがおすすめです。
それでも初歩的な単語や文法もわからず、やり直したほうがいいと感じモチベが下がっているのなら、一度中学レベルの基礎を学習し直すことは効果的だと思います。
こちらの記事で、英語の基礎力を習得できる教材を紹介しています。
⑧「この学習法は自分に合っていないかもしれない」
悩み:周囲がテキスト学習やオンライン英会話をしている中、自分だけ違う方法で不安になる。
回答:しっくりこなければ一度辞めて、他の方法を試してみることもありだと思います。
学習法は一つではないし、様々なことを試して一番しっくり来たことをやるのが、モチベーション的にも良いです。
後でやっぱりイマージョンがいいかもしれないと思えば、その時に再挑戦したらいいと思います。
⑨子供のころからやっていないと無理なのでは?
回答:上記に挙げた動画の方のように、大人になってからイマージョンラーニングによって、別の言語をできるようになっている方はたくさんいるので大丈夫です。
⑩地頭がよくないとできないのでは?
回答:過去の学びや経験、応用力やコツをつかむ早さ等によって、成果を感じられる期間に個人差があると思います。
これはスポーツでもゲームでも勉強でもなんでもそうです。
しかし、
実際に試す→うまく行ったこと、失敗したことを学ぶ→改善する
このサイクルを継続することによって、誰でも、確実に成長することが可能です。
やれば伸びるという成長マインドセットの効果
やれば伸びると考える「成長マインドセット」を持つ方が、実際に成果が出ることも研究で明らかになっています。
Carol Dweck(キャロル・ドゥエック)の実験
スタンフォード大学のDweck教授は、「成長マインドセット(努力で能力が伸びる)」と「固定マインドセット(能力は生まれつき固定)」を比較する様々な研究を行いました。
その結果、成長マインドセットを持つ学生は、挑戦を学習の機会と捉え、失敗に前向きにアプローチして成果を出しやすいことが明らかになっています。online.hbs.eduSpringerOpen+13Teaching Commons+13lifescied.org+13。
7. まとめ
イマージョンラーニングは、英語を効率的に学ぶための非常に効果的な方法です。
日常的に英語に触れることで、自然と語彙やフレーズを覚え、実際の会話で使えるようになります。
最初は理解できないこともありますが、繰り返し学び続けることで、気づいた頃にはたくさんの語彙力を獲得することが出来ます。




